日本とベトナムの安全の値段
沖縄県宮古島市の伊良部大橋で、プロポーズ直後にふざけて橋の欄干に立った男性が転落し、死亡しました。
安全対策として橋の欄干に登れないように柵が設置されるかもしれません。
もしそうなれば、景観は悪くなるし、相当の費用が掛かります。
亡くなった男性には気の毒ですが、軽率な行動が他の人に迷惑を掛けてしまったことは明らかです。
日本では、滅多に起きない事故のために安全対策を行うことがよくあります。
その費用をすべて集計したら膨大な額になるのは確実です。
5年ほど前に、家の近所の公園で、滑り台から女の子が転落する事故がありました。
幸い命に別条はありませんでしたが、その公園は地面にゴムを敷き詰めるまで、しばらく閉鎖になりました。
女の子が落ちて怪我をしたのは事実なので、危険があったことは確かです。
でも、公園ができてから約40年の間、とくに事故は起きていませんでした。
そこに、数百万円を掛けてゴムの樹脂を敷き詰める必要があったかは疑問です。
同じような危険は、階段があるところはどこにでもありますが、「危ないからゴムを敷き詰めろ」という人はいません。
ゴムを敷き詰めるのは、お金はかかりますが、行動に制約はないので、まだ良い方です。
橋に柵を設置すると景色が見えなくなるなど、お金を使ってかえって不便になってしまいます。
同じようなことが、日本の至る所で起きていて、安全・安心というよりは息苦しさを感じます。
ベトナムでは、逆に「もっと安全対策をしっかりしてよ。」ということばかりです。
道を歩いていたら、マンホールの蓋が割れて下水道に落ちてしまったとか、変圧器を触ったら感電死してしまったとか危険が一杯です。
日本でこのような事故が起きたら、自治体や電力会社の責任が問われるでしょう。
しかし、ベトナムでは「事故に遭った奴が不注意だ。」と思われる雰囲気があります。
自治体や電力会社に責任がないと思っているわけではないのですが、自分の身は自分で守るという自己責任の考え方が徹底しており、被害者はあまり同情してもらえない気がします。
しかも、補償金がもらえたとしても、本当に雀の涙程度らしいです。
死んでも数十万円程度らしいので、死んでも死に切れません。
ベトナムは危険も不安も一杯ですが、身軽で自由な雰囲気も溢れています。
ところで、当社のオフィスの横に設置されている非常階段の手すりが錆びており、すぐに折れてしまいそうです。
しかも、非常階段とビルには微妙な隙間があいており、それがさらに不安にさせます。
でも、非常階段からはホーチミン市中心部が一望できるので、たまに踊り場に出て気分転換しています。
そのときは、転落死しないように、手すりに寄りかからないように注意しています。