官公庁と甘い汁
初対面の人に官公庁の仕事をしていますと言うと、一瞬微妙な空気が流れることがあります。
官公庁に出入りしている業者は、役人と癒着して甘い汁を吸っていると思っている人が結構います。
でもシステム開発に関しては、まったく甘くありません。
大部分の案件は入札へ
昔は、随意契約と呼ばれる発注形態が主流でした。
随意契約では、最初から発注する業者が決まっています。
競争がありませんから値引きする必要がなく、受注業者は大きな利益を上げることができました。
これはよくないということで、ほとんどの案件で入札が行われるようになりました。
今では、小規模な改修案件でも極力入札にしたいと希望されるお客様が多くいらっしゃいます。
「この案件は、他の業者では対応できませんよ。」と言っても、「それなら入札しても1社しか応札しないから問題ないでしょ。」と言われて、入札にされてしまいます。
実際、1社入札になることがほとんどですが、入札になると調達仕様書の作成や決裁等に時間が掛かるため、そのしわ寄せが作業期間にいくのが問題です。
仕様書作成はタダ働き
入札を行うためには、何が欲しいのかを仕様書にまとめなければならないのですが、大部分のお客様はシステム仕様をまとめることができないので、コンサルタントか出入りの業者に仕様書の作成を依頼します。
出入りの業者に頼む場合は、無償で対応する場合が多いです。
「業者がタダで対応するのは受注が有利になるからに違いない。」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
出来上がった仕様書の案は、別の業者に提示されて記載内容をチェックされます。
もし、特定の業者しか対応できない内容が書かれていれば、このチェックに引っ掛って修正されてしまいます。
そうして完成した仕様書は、業者の色がついていない公正なものになるわけです。
では、なぜ仕様書案の作成を無償で受けるかというと、そのお客様とのお付き合いがあるからです。
受けてもメリットはない代わりに、断るとどんや災厄が降りかかってくるか分からないので、渋々受けているのが現実でした。
短期間で対応出来る案件なら良いのですが、1年以上に渡って仕様を検討する会合に参加しなければならない案件もあり、対応する労力がとても大きな案件もありますが、断ることはできません。
仕様書案を作成すると落札できない
それでも「要求仕様を事前に知ることができるのだから有利ではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、システム開発の受注において、要求仕様を正確に把握していることは、受注において有利に働くとは限りません。
要求仕様の正確な把握は、適正な価格算出には役立ちますが、受注に必要なのは最低価格だからです。
応札業社が5社くらいいると必ず1社はとんでもない安い価格を出してきます。
戦略的に安い価格を設定しているのであれば問題はありませんが、見積りミスの場合も多いようです。
これを防ぐため、仕様書案を作成するときに、重要な要求事項や実現が厄介な要求事項は、見落としがないように記述するのですが、どんなに丁寧に書いても読んでくれない業者は、まったく読んでくれません。
しかし、このような業者が受注するケースが結構あります。
実際、調達仕様書の作成やチェックに携わった案件よりも、事前に何もせず入札だけ対応した案件の方が、落札率は高かったです。
その代り、事前に何もしなかった案件は、赤字プロジェクトになる確率も高かったです。