お客様が逮捕されたときの話
TVのワイドショーでは、犯人が捕まると職場の同僚や近所の人にインタービューをしています。
私の職場でも一度だけありました。
突然の招集
今から20年ほど前のことです。
私のプロジェクトは、お客様や他のベンダーと共同でビルを借りて一緒に働いていました。
ある日の朝、突然上司から「全員会議室に集まるように」と指示がありました。
一緒のフロアーで働いている別のベンダーでも同じような指示が出ているようです。
このようなことは前例がありません。
会議室に行くと上司から、以下の説明がありました。
・前日の深夜、お客様のAさんが警察に逮捕された。
・罪状は、婦女暴行である。
・マスコミがインタビューに来ることが予想されるが、一切応じないこと
逮捕されたAさんは、私のシステムの担当ではありませんでしたが、そのお客様のシステムと私のシステムは連携していたため、面識はありました。
静かな人でしたが、至って普通の人という感じで、とても凶悪犯罪を犯すような人には見えませんでした。
「まさか、あの人が・・・」
その日の職場は、事件の話題で持ちきりでした。
「あの人が罪を犯すなんて信じられないね。」などという話をずっとしていました。
TVのインタビューで「まさか、あの人が・・・」と言っているのを見ると「嘘くさい」などと思っていたのですが、現実に自分の身の回りに起きると同じような感想しか出てきません。
お客様は国家公務員だったので、マスコミの扱いも大きく、午後になるとネットから情報を得ることができました。
それによると、地方勤務だったAさんはシステム開発のため、現在の部署に異動になったが、慣れない業務のうえ、長時間の残業でストレスが溜まり犯行に及んだとのことでした。
近隣では同様の事件が起きており、警察は余罪があると見ているそうです。
その日は、午後10時過ぎにオフィスを出ました。
マスコミが待ち伏せしていたらどうしようと辺りを警戒しながら出たのですが、誰もいませんでした。
翌日、取材を受けた人が様子を話してくれました。
マスコミは1組だけだったそうで、何も言わずにうつむいていたら直ぐにあきらめたそうです。
この事件が起きてから、同じような事件でインタビューを受ける人たちに対する見る目が変わりました。
それまでは「何か一言くらい答えれば良いのに」と思っていたのですが、その事件以降は同情的な目で見るようになりました。