年功序列制度は、長い間日本の雇用を支えてきた制度ですが、最近になると日本企業の非効率の象徴のように扱われて崩壊しつつあります。
でもそんなに悪い制度なのでしょうか。

管理職になって変わった年功序列に対する評価

私が若いときは、年功序列制度にとても不満を持っていました。
何もせずに定時に帰る上司たちは高い給料をもらっているのに、重い責任を背負わされて長い時間働かされる自分の給料は低かったからです。

その考えが変わったのは管理職になってからでした。

そう言うと、自分が楽をして高い給料をもらえる立場になったからではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。部下を見ていて考えが変わったのです。

私が管理職になった頃から成果主義が導入されました。
これと同時に、各人の成績に差をつけることが強制されるようになりました。

私の会社では、最も高いSランクからA、B、C、Dの順に5段階に分けて社員を評価することになっていました。
以前は、どのランクに何人割り振るかは決まっていなかったのですが、これがSランクは5%、Aランクは15%というように割り当てる比率が決められたのです。

成績に差をつけるのは当然のことですが、困ったのは下位の評価にも必ず割り当てなければならないことです。
最下位評価が2、3期続くと明らかにやる気が落ちてしまいます。

これを給与等級別に行っていくので、若い人たちのなかからも最下位評価の人を出さなければなりません。
まだ長い会社人生をやる気なく過ごしていく。
そんな人間を自分の評価が作り出してしまうと考えると、とても辛かったです。

年功序列は会社にとっても優れた制度

そんな経験をしてから年功序列制度を見ると、とてもよく出来た制度だと感じました。
社員を横並びに昇進させていき、落伍者はできるだけ遅く、最小限の人数に抑える制度です。
つまり、社員のやる気を最大限に発揮させる制度なのです。

高齢化が進み役職の数が足りなくなったことが、成果主義・能力主義への転換の理由だと思います。
欧米で成果主義・能力主義がうまくいっているのは、労働市場の流動性が高いからです。
例え50歳代でも、能力がなければ18歳と同じ給料で働くことが当たり前の社会だからです。

日本が、成果主義・能力主義に変わるのであれば、これを受け入れなければなりません。
当然、今よりも格差はさらに拡がっていきます。

大企業の責任

また、大企業は無責任だと思います。
成果主義への切り替えを進めているのに、労働市場の流動性を高める動きはしていないからです。

労働市場の流動性を高めるためには、社員の専門性を高めていかなければならないのに、相変わらず総合職という自社でしか通用しない何でも屋ばかりを育成しています。
欧米のようにスキルは自分で身につけるのが前提だとしても、専門性を活かして伸ばしていく人材活用が必要ではないかと考えます。

例えばプログラマやSEは、欧米では転職を頻繁に行ってキャリアを積んでいくのが普通ですが、日本ではある程度年をとると管理職になり、技術的な事柄から離れるのが一般的です。
管理職の職務は会社ごとにまったく異なりますから、他社では役に立たない人材になってしまうわけです。
これを嫌って管理職になるのを拒否すると、出世はできないことになります。

技術者としてのキャリア・パスをきちんと用意して、定年まで技術を磨き続けることができるようにすべきだと考えます。

そうすれば、技術を磨くことを怠った人を低い評価にしたり、会社を辞めさせたりしても筋は通ると思います。

この他にも、最初にスキルを身につけされるためのインターン制度の拡充や、大学の教育内容の見直しなど、社会全体として取り組まなければならないことがたくさんあります。

予想される社会の変化について説明が必要

一番の問題は、予想される社会の変化について説明がまったくないことです。
どうなるか分かれば、それに対して賛成・反対の議論ができますし、変化の痛みを和らげる備えをすることもできます。
もしかすると、多少年収等は減っても年功序列のままでいいという意見が多数を占めるかもしれません。

どちらにしても、国民生活に大きな影響がある事柄なので、きちんと説明して欲しいものです。