私は、入社して直ぐに忙しい部署に配属されました。
毎月の長時間残業で疲れきってしまい、係長になった頃には出世したいという意欲もなくなっていました。
それがある時期を境に上司の言うことを素直に聞くイエスマンに変わりました。
きっかけは、とてもつまらないことでした。

気前の良い課長

他部署のK課長と仕事をしたときのことです。
K課長は面倒見が良く、仕事の後よく私たちを飲みに連れて行ってくれました。
しかも帰りには、まだ電車がある時間にも関わらずタクシー券をくれます。

私の部署の課長は、一緒に飲みに行っても割り勘で、タクシー券をくれたことはありません。

「どうしていつもおごってくれるんですか?K課長はお金持ちなんですか?」

疑問に思った私は、K課長に聞いてみました。

K課長「自分のお金じゃないよ。会議費を使っているんだよ。」
私  「会議費ってなんですか?」
K課長「接待費はお客様と一緒に飲みにいったときに使うでしょ。似ているけど、社内では会議費を使うんだよ。」
私  「でも、うちの課長はおごってくれたことはありませんよ。」
K課長「あの人は固いから。」
私  「どうすれば会議費をもらえるんですか?」
K課長「課長になればもらえるよ。」

今考えるとK課長は明らかに公私混同しており、うちの課長の考え方の方が正しいと分かりましたが、当時の私は、会議費の意味を知らなかったので「うちの課長はケチだから会議費を使わないんだ」と思いました。

「けしからん」と言われそうですが、それまでは課長になりたいなんて全然思わなかったのですが、それをきっかけに課長になりたいと思いました。

それからは態度を改め、上司の無理な要求にも応え、2年後に無事に課長に昇進することができました。

管理職のメリットを部下に見せることは大切

近頃の管理職は、管理職がとても大変であることを部下に見せようとしがちです。
確かにプロジェクトが複雑になり、昔よりも格段に管理職の負担が重くなっていることは確かです。

しかし、その姿を見て「あんなになるのなら管理職にならなくてもいいや」と考える部下が増えています。

行き過ぎた上昇志向は良くありませんが、適度であれば組織の活性化や本人の成長意欲の向上につながります。
逆に上昇志向のないメンバーで構成された組織は停滞してしまいます。

メンバーの上昇志向を向上するためにも、上司は管理職になることのメリットを積極的に部下に伝えていくべきです。

また、メリットと感じることは人によって違うので、普段からよく話し合い、部下が何をメリットと感じるかを理解するように努めるとより効果的です。
私も酒を飲みながら、将来どんな技術者になりたいかを部下に聞くようにしていました。

逃げていく会議費

無事に課長に昇進したのは良かったのですが、昇進と同時に会議費とタクシー券は部長が管理するように会社の制度が変わってしまいました。

課長が使う場合は、あらかじめ目的と参加者を申請して部長に承認をもらわなければなりません。

その後、部長に昇進した時も、会議費とタクシー券は上司の本部長が管理するように変わりました。

結局、自分では会議費を使ったことは一度もありません。