日本では、長時間残業による過労死、ブラック企業など労働者の権利を踏みにじる事件が起きています。
一方、ベトナムは社会主義の国なので、労働者の権利は大切にされているだろうと思いがちですが、必ずしもそうとは言えないようです。

雇用契約の更新

オフショア開発の委託先に仕様説明で出張していたときのことです。
朝から技術者がみんな落ち着かない様子です。
通訳に何があるのかを聞いてみると「今日は契約更新の面接があるからです」と答えました。

私 「給与の査定があるの?」
通訳「給与の査定だけではありません。成績が悪いと解雇されます。」
私 「え、みんな正社員でしょ。」
通訳「はい、そうです。」
私 「正社員なら労働契約があるから、解雇されないでしょ。」
通訳「採用されてから1年後と3年後に契約の更新があって、そこで解雇される場合があります。」

その会社では採用されてから3年間が経つまでは日本の正社員と同じ待遇にはなれないというのです。
調べてみると、それは特殊なことではなくごく一般的なことでした。

ベトナムの労働契約

日本では、雇用契約は有期雇用と無期雇用(期間の定めのない雇用)の2種類しかありません。
正社員として採用される場合、3ヶ月程度の試用期間を過ぎれば直ぐに無期雇用、つまり定年退職まで働く権利が与えられます。

一方、ベトナムでは①12ヶ月未満の雇用、②12ヶ月以上36ヶ月以内の雇用、③無期雇用の3種類が設けられており、①、②の契約を2回まで結ぶことができます。
それを利用して労働者と無期雇用契約を結ぶのを先延ばしするのが一般的だというのです。

前述の会社では、1年契約と2年契約を結ぶことによって、無期雇用を結ぶのを3年間先延ばしにしていたわけです。
その会社は、元々国営企業でしたし、業界最大手の企業だったので、特別不当なことをしているわけではありません。

採用時の面接だけでは本人の能力や適性などを見極めるのは困難なので、実際に働いてもらった後に判断できるのは会社にとっては良いシステムです。
しかし日本人から見ると、会社にばかり都合の良いシステムで、労働者に不利な仕組みに見えてしまいます。

日本の制度が労働者に甘すぎなのか、それとも転職率が高いベトナムだから許されるシステムなのかは分かりませんが、日本とベトナムのどちらが労働者に優しい国なのか分からなくなってしまいました。