最近、IT業界でも訴訟等に発展するトラブルが増えてきましたが、日本人の契約に対する意識はまだまだ低レベルです。
私が勤めていた会社でも、プロジェクト発足会議でPMに契約内容を確認しても曖昧な答えが返ってくることが多かったです。契約書をまったく見ていないPMも珍しくありませんでした。
契約書に書いてあってもなくてもベンダがやらされてしまうことが多いので、一所懸命、契約書の条項を詰めても無駄だと最初からあきらめてしまっているのかもしれません。

しかし、中国やベトナムなど海外の国々は違います。
契約の時は、少しでも有利な条件にしようと真剣に交渉します。契約書に書いていないことはなかなか対応してもらえません。同じアジアの国だから情が通じるだろうと甘く考えていると痛い目にあいます。
ですから日本国内で契約を結ぶ場合と違って、日本側も真剣に取り組む必要があります。

今回は、オフショア開発を発注する時に契約書に記述しなければならない以下の5つのポイントについて説明します。

  • 進捗報告のタイミングを明記する
  • 進捗が遅れたとき、品質が悪かったときの対応を明記する
  • エンジニアが辞めた時の対応を明記する
  • 瑕疵担保の範囲、対応期間について明記する
  • 守れなかった時のペナルティをちゃんと書いておく

進捗報告のタイミングを明記する

進捗報告の様式、タイミングについては、契約時に決めているプロジェクトは多いと思います。
しかし、平常時だけで問題が発生したときのことは決めていないのではないでしょうか。

大幅な進捗遅延が生じた場合、毎日進捗状況を確認しなければならない場合が出てきます。
私が、ベトナム・オフショア開発を始めたばかりのときも、そのような状況になったことがあります。
発注先の幹部に日々の進捗報告を依頼すると、あっさりと断られました。理由は「契約書に書いてあることと違う」からでした。日本人の感覚だと「遅れて迷惑を掛けているんだから、進捗報告くらいは対応しよう」と考えると思うのですが、彼らは遅延と契約はあくまでも別という考え方です。

そのつぎの発注から「3日以上遅延した作業が生じた場合、日々の進捗報告を行わせることができる」という条項を付け加えました。

品質が悪かったときの対応を明記する

受入テストを実施したら、バグが山のように発生して、本当にテストをしたのかどうか疑いたくなるときもあります。
こんな状況でも納品物が揃っていて、日本側が指摘した不良をすべて直してしまえば契約には違反していないことになります。

このようなときにちゃんと品質向上を行ってもらえるように、「受入テストでxx件/ks以上の不良が摘出された場合、品質向上を実施する」という条項を規定しておくべきです。
また、品質向上での不良摘出件数も規定しておいて、それが達成されるまで品質向上を完了できないようにすべきです。

エンジニアを勝手に異動できないようにする

プロジェクトの途中で、エンジニアを勝手に別のプロジェクトに移す管理者がいます。
それができないように、移動する場合には発注元の許可が必要となると定めておいた方がよいです。

瑕疵担保の範囲、対応期間について明記する

製造だけを委託していると瑕疵担保という概念は当てはまらないかもしれません。
しかし、受入テストが完了したら、すべての責任は発注者側が負担するというのも現実的には厳しいです。
性能の問題や保守性の問題など、受入テストの期間だけでは摘出が難しい不具合があるからです。
そこで、善管義務に反する場合、1年程度は修正義務を負わせるよう定めておいた方が良いです。

守れなかった時のペナルティをちゃんと書いておく

契約書に書いておいても具体的なペナルティがないと効果がありません。
契約全体を無効にするような大きな違反なら別ですが、部分的な違反なら「大変申し訳ありません。でも起きてしまったことはしょうがないでしょ。」と平気で言ってきます。

それを防ぐためには、違反したときのペナルティをキチンと契約書に書いておくことです。
それもなかなか実施できない大きなペナルティではなく、違反内容に合ったペナルティにしておくことが大切です。

でも実際には・・・

私のプロジェクトでは、何度かプロジェクトを発注しているうちに契約内容が充実してきました。
そして遂に進捗遅延が発生し、オフショア開発側の幹部に言いました。前に契約を盾にとって日々報告を断ってきた相手です。

私 「遅れが大きくなったので、日々進捗報告を行ってください。」
幹部「しかし、日々進捗をまとめるのは大変です。」
私 「何を言っているんですか。契約書に書いてありますよ。」
幹部「それは分かっているんですが、そこを何とか・・・」

彼らは契約書が使えれば使うし、それが駄目なら泣き落としでも何でも使って交渉してくるということにそのとき気がつきました。ベトナムは決して欧米のような契約社会ではなく、もっとしたたかなんだと思いました。