システム開発に携わるようになってから、ずっと考えてきたことがあります。
楽観的なプロジェクトマネージャと悲観的なプロジェクトマネージャのどちらが、この仕事に向いているのだろうということです。

プロジェクトマネージャは、常にプロジェクトの異常に気を配り、リスクは芽のうちに摘み取る慎重さが必要です。
でも、いつも不安でいると消耗してしまいます。

かといって、リスクに関して何も考えていないと、リスクが直ぐに現実化してしまいます。

計画を立てるときは繊細に、実行するときは大胆にと切り替えられれば良いのでしょうが、そんな器用な人はなかなかいないと思います。

それに、リスクは常に考え続けていないと見つけられないものなので、常に警戒している悲観的なタイプの方がプロジェクトマネージャには向いているのではないかと思っていました。

会社を辞め、プロジェクトを直接管理することがなくなって、そんなことを考えていたことも忘れていたのですが、『「幸せ」について知っておきたい5つのこと』という本を読んでいて久しぶりに思い出しました。

この本は、数年前に流行ったNHKの白熱教室を書籍化したもので、幸せについて精神論ではなく、あくまで科学として研究した成果をまとめた本です。

幸せになるのは、圧倒的に楽観的(ポジティブ)な考え方に人だそうです。
しかも、幸福度が高い人ほど長生きすることも分かってきました。

この事自体は予想通りですが、悲観的なプロジェクトマネージャは、仕事で神経をすり減らして長生きできないというのをはっきりと言われると、職業選択を誤ったかなと思ってしまいます。

ポジティブな人は個人主義の国に多く、ネガティブな人は集団主義の国に多いそうです。
個人主義的傾向が最も強い国は米国で、集団主義的傾向が強い国は日本など東アジアの国々だそうです。

ただ、この本の著者は、単純に米国人は幸せになりやすく、日本人は不幸になりやすいと言っているのではなく、自分たちの考え方とは違う考え方が存在していることを感じているようです。

『日本をはじめ環太平洋地域の儒教国、東アジアの集団主義の国では、ネガティブな感情をより大きくとらえているということです。つまり「ネガティブな感情があってもかまわない」と考えているのです。』
(ロバート・ビスワス=ディーナー 米ポートランド州立大学講師)

『日本を含む東洋には諸行無常という考え方があって、要するにすべては楽観でも悲観でもないととらえます。(中略)時間・空間を大きくした中から、本当の楽観とでもいうべきものが出てくる。つまり、自分勝手、独りよがりではなくて、楽観も悲観もわかった上で、しかし、楽観的にやろうよという考え方が出てくる。この点が、まさに近代西洋にないというと言いすぎかもしれませんが、東洋のよさだと思います。』
(前野 隆 慶応義塾大学教授)

結局、悩んで悩んで悩み抜きながらプロジェクトを遂行していく悲観型のプロジェクトマネージャが日本的なのかもしれません。
ただし、幸せになるためには不安を抱えながらも心の平静を保つ精神力が必要です。

この本を読んでいるうちに、欧米人と日本人の考え方の違いの大きさを思い知らされました。
現在、日本で使われているプロジェクト・マネジメント手法はPMBOKなど欧米で作られたものばかりですが、そもそも日本人に合っていないのではないかと思います。

能天気(超楽観的)で何でも人のせいにしてしまう人向けに作った手法を、心配性(悲観的)で何でも自分が悪いと考えてしまう人に当てはめてうまくいくはずがありません。

それに、何でもプロジェクトマネージャ1人に押し付ける考え方には違和感を持っていましたが、個人主義の国で作られた考え方だと思えば納得できます。

やはり、日本人に合った日本独自のプロジェクトマネジメント手法が必要なのかもしれません。

ちなみにオフショア開発で出会った中国人やベトナム人の技術者は、みんなポジティブな人たちでした。
(よく言えばポジティブですが、悪く言うとその場しのぎ、すぐ人のせいにする人たちです。)

書籍の中では、ネガティブな性格を東アジア全体の特徴であると分析していましたが、私はもっと狭い範囲にしかあてはまらないと思います。

もっとも、それは日本人から見ればという話で、欧米人と比較するとアジア人はネガティブに見えるのかもしれません。
インド人技術者に比べれば、中国人やベトナム人の技術者はネガティブですから。