東芝の「チャレンジ目標」はそんなに悪いことなのか
東芝が現在の状況に追い込まれた最初のきっかけは予算の積み増しの強要が粉飾決算につながったことでした。
これと同じことは、私が以前勤めていた会社でも行われていました。
しかも「チャレンジ目標」という同じ言葉が使われていました。
「チャレンジ目標」の使われ方
私がいた会社では、毎年6月と12月に翌期の予算を作成していました。
12月に翌年度全体の予算を作成し、6月は上期(4月〜9月)の実績を織り込みながら、下期(10月〜3月)の予算見直しを行います。
最初は課で作成し、部レベル、事業部レベル、全社レベルとまとめていくのですが、各段階で行われる予算会議の場で予算の積み増しが行われていきます。
そのときに「チャレンジ目標」という言葉が使われます。
部長「君の課の売上は前年度比20%増か、せめて30%増にならないのかね。」
私 「全社の目標である15%増はクリアしています。」
部長「君の課は新しい分野をやっているんだから全社目標をクリアしているくらいで満足してもらっては困るよ。」
私 「しかし、人員の制約もあるので20%が限界と考えています。」
部長「そこを何とかするのが君の仕事だろ。」
私 「そう言われましてもうちの課の実力を考えますとこの辺が妥当な目標だと思います。」
部長「厳しいのはみんな一緒だ。それを打ち破るためのチャレンジをしないとダメだろ。」
私 「はあ・・・」
部長「よし、チャレンジ目標ということで 売上30%増、それに合わせて利益も増やしておくこと。」
私 「でも達成する自信がありませんよ。」
部長「チャレンジ目標なんだから、もし達成できなくても考えるから。とにかく全力でやれ。」
毎期こんな感じで予算の積み増しが行われていきます。
このあとも事業部レベル、全社レベルで同じことが行われるので、予算数値はさらに上がっていき、到底達成不可能な数値になってしまうのです。
「チャレンジ目標」はどこかへ
管理職になったばかりの頃は、チャレンジ目標なんだから仮に達成できなくても仕方がないと考えていたのですが、現実はそんなに甘くありません。
毎月行われる業績会議で未達の場合、厳しく責められます。
部長「今月の実績は未達になっているじゃないか。どうなっているんだ?」
私 「いろいろ努力しているのですが、チャレンジ目標の分がどうしても達成できませんでした。」
部長「言い訳じゃなく、どうやって回復するか聞いているんだ。」
私 「達成できない場合、考えると言っていたじゃないですか。」
部長「やれることは全部やったのか。そうじゃないだろ。対策を考えて後で報告しろ。」
当然ですが、チャレンジ目標といっても予算数値の中が分かれているわけではありません。
いったん受け入れてしまえば、あくまで絶対に達成しなければならないものになってしまいます。
「チャレンジ目標」が悪いのではない
おそらく東芝でも同じようなことが行われていたのでしょう。
おそらく、同じことを多くの会社でもやっているのではないかと思います。
手のひらを返すように言うことを変える私の上司はひどいとは思いますが、マスコミで叩かれるほどひどいことではないと思います。
本当に悪いのは、予算を達成できなかったことを隠すために粉飾決算を行ったことで、チャレンジ目標の強要を悪の根源のように報道するマスコミには違和感を覚えます。