日本は少子高齢化で市場は小さくなるばかりです。
それを見越して海外に進出する企業がたくさんあります。

私が働いていた会社は、元々はドメスティックな企業でしたが、海外市場の開拓を目指して外国企業の買収などを行うようになりました。
それと並行して外国籍の社員を採用し始めました。

私が所属していたのは、官公庁向けシステム開発を行う部署だったのですが、そこにも外国人の社員が配属されるようになりました。
会社としては、グローバル化に向けて外国人と働くことに慣れさせようという意図があったのだと思います。

やらせることがない

一緒に仕事をしたことがあるのは2人で、中国、ベトナムの出身でした。

中国人のS君は、高校卒業後に来日し、国立の難関大学を卒業していました。
日本での滞在歴は長いこともあり、3人の中で一番日本語が上手かったです。

ベトナム人のAさんは、ベトナムの国立大学を卒業し、そのまま新卒で入社してきました。
そのため、日本語はあまり上手ではありませんでした。

2人の扱いで一番困ったのは、何をやらせるかでした。
お客様は官公庁ですから、機密性の高いシステムに外国籍の人が関わることを嫌がります。

それに日本語がどんなに上手くても限界がありますし、はっきりと物を言わない日本人の会話を理解するのはかなり難しそうでした。

プログラムの詳細設計やコーディングを頼めれば良かったのですが、皮肉なことにそういう作業は、大部分をオフショア開発に発注していたので、彼らに割り当てることができませんでした。

そこで、オフショア開発先とのコミュニケーションの補助をやってもらったのですが、元々オフショア開発先のブリッジSEでこと足りていたので、要求仕様の理解や技術力が不足している彼らが活躍できる場面は、そんなにありませんでした。

それで仕方なく、日本人新入社員と同じように雑用からやってもらうことにしました。

夢と現実の差

しばらくすると、ベトナム人のAさんから相談があると言われました。

私  「相談というのは何ですか?」
Aさん「仕事の内容についてです。」
私  「どんな内容ですか?」
Aさん「私は大学でITを勉強しました。今の仕事は私にふさわしくないと思います。」
私  「コピーや調べ物のことですか?」
Aさん「そうです。」
私  「どんな仕事が向いているのですか?」
Aさん「企画やリサーチが向いています。」
私  「でも、あなたにはそれらの経験がないですよね。」
Aさん「やらせてもらえれば直ぐにできます。」
私  「単純作業も重要です。それをこなしたらいずれ他の仕事を割り当てます。」
Aさん「もう十分覚えました。」
私  「他の日本人の新入社員も同じことをやっているでしょ。もう少し頑張ってください。」

Aさんはあまり納得していなかったようでした。
結局、半年ほどで会社を辞めてしまいました。

時期は違いますが、S君からも同じような相談をされ、彼も会社を辞めていきました。
おそらく会社に入る前に思い描いていた理想と現実のギャップに耐えられなかったのでしょう。

日本では一流大学を出ていても、修士号を持っていても、会社に入ったばかりの時は雑用をやらされます。
大学で学んだことが会社で戦力になることはまれですし、雑用を繰り返し行うことでしか身につかないこともあるので、雑用をやることは大切なことだと私は思っています。

しかし、海外では、優秀な学生は入社時から地位、給与、業務内容が別だと聞きました。
それを想定して会社に入ってきたとしたら、不満が募るのも仕方がないことだと思います。

外国籍社員を入社させる場合は、彼らを雇う目的を明確にして、彼らに対しても何を期待しているのか、仕事の内容は何かをよく説明することが大切だと思います。

オフショア開発では海外企業とうまく付き合っていると自負していたのですが、この二人が辞めてしまったことで自信がなくなってしまいました。
やっぱり海外の人と仕事をするのは難しいですね。