長い期間、サラリーマンをしているといろいろな業務命令を受けます。
システム開発の現場では、「絶対に無理」と言いたくなるような命令を受けることも多いです。
なかには「そんなことをしてもいいの?」と首を傾げたくなるような命令を受けることもあります。

「技術者を家に帰らせるな」と指示された

今から約20年前のことです。
私は、自分が担当していたサブシステムの総合テストが完了したところで、別のサブシステムの支援に回されました。
サブシステムといっても百万行(1Mstep)を超える大規模なものでした。
そのサブシステムでは不良が多発し、完了期限になっても総合テストを完了できずにいました。
そんな大規模サブシステムの仕様を短期間で理解できるはずもなく、主に私はPMの補佐として管理資料の作成を手伝っていました。

そんなある日、遅延回復のために常駐していた副事業部長から呼ばれ、指示を受けました。
その指示の内容は、ある技術者を家に帰らせるなというものだったのです。

その技術者は非常に優秀だったのですが、大きな問題がありました。
それは、会社に来ないことだったのです。

本人の話によるとひどい睡眠障害を患っていて、夜になってもなかなか寝ることができず、一旦眠りにつくといつまでも目が覚めないため、夕方から出社したり、休んだりを繰り返していました
たまに朝から来ることもありましたが、そういうときは寝ないで会社に来ているとのことでした。

本来は、そのような人に重要な仕事を任せてはいけないのですが、総合テストと並行して実施せざるを得なくなった顧客確認テストの実施に対応できるのは、その人だけという状態に陥っていました。

ところが、会社に来ないため、お客様の要求に合わせたテスト実施が出来ないということが何度も発生していました。
それで私に、その技術者を家に帰らせるなと指示が出されたわけです。
期間は約1ヶ月で、この指示のことは誰にも言うなと念を押されました。

強引に飲みに誘ってホテルに泊まらせることにしたが・・・

その頃は午後11時か12時に仕事が終わっていました。
そこで、帰るときに「飲みに行こう」と誘い、飲み終わった頃には電車がなくなっているので、「泊まっていこう。経費は会社で精算できるようにしとくから。」と言って、ホテルに泊まらせました。

その技術者は酒が大好きだったので、最初の2、3日は喜んでついてきてくれました。
ところが、4日目辺りから「今日は家に帰りたい」と言うようになってきました。
着替えも持ってきていないので、当たり前です。
それを「今から帰ると眠る時間がないよ。泊まっていった方が良いよ。」と説得して強引に泊まらせました。

そうして何とか1週目を乗り切りました。
2週目以降は、その技術者は事情を悟ったようでしたが、あきらめて素直に泊まってくれるようになりました。

なんとか任務を終えることができましたが、その技術者を騙しているという後ろめたさで、何ともやりきれない1ヶ月間でした。

それと事情を知らない課長から「電車のある時間に帰っているのに、何でホテルに泊まっているんだ。」と文句を言われても理由を説明できなかったのも、非常に辛かったです。

幸いにもそれ以降は、そのような人に説明できないような指示を受けることはありませんでした。