いい年をして情けない話ですが、私は少し潔癖性のところがあります。
昔は、食べ物に髪の毛や虫が入っていると、その皿に入っているものはまったく食べることができませんでした。
今はかなり改善して、異物の周りだけを取り除けば、残りは食べることができるようになりました。

そんな私が海外で一番困るのがトイレです。
海外に行くとお腹が緩みがちで、普段よりもトイレに頻繁に行きたくなるのに、なかなか入れるトイレがありません。

昔は、日本のトイレはそんなに綺麗ではなかったと思うのですが、近頃はホテルのように綺麗なトイレが多くなり、いつの間にかそれを当たり前だと感じるようになってしまったようです。

ベトナムでも中国でも、今は綺麗なデパートやレストランができて、綺麗なトイレが増えてきましたが、10年前は街中に入れるトイレがほとんどありませんでした。

そのため、大きい方はホテルで済ませてくるのですが、下痢気味でちょっとお腹が痛いときなどは冷や汗をかきながら仕事をしていました。

ハノイのオフショア開発会社に発注したときのことです。
その会社は小さな自社ビルを所有していました。まだ小さな会社なのに立派なものだと感心しながら建物に入ると強烈な匂いがビル中に漂っていました。
明らかにトイレの匂いです。汲み取り式ではないかと思うくらい強烈な匂いでした。

そのビルにはエレベーターはなく、ビルの中央に螺旋階段があり、ビルの中央は吹き抜けになっていたので、トイレの強烈な匂いは、ビルの中に充満していました。

一緒に行った二人は何ごともないような顔をしていたので、打ち合わせの合間に匂いのことを聞くと、二人とも「凄い匂いで我慢できない。」と言っていたので、私だけが気になっていたわけではないと分かり安心しました。

その日は打ち合わせを順調に終え、発注先の幹部と会食しました。

次の朝起きると、お腹に違和感がありました。少し痛いような押されるような感じです。
たいしたことはなかったので、そのまま会社に行き、打ち合わせを行っていると、お腹の痛みは段々激しくなってきました。

打ち合わせの相手から「顔色が悪いですが大丈夫ですか?」と何度も聞かれましたが、「大丈夫です。」と答えるほかありません。
とにかく打ち合わせが早く終わるように急いで仕様を説明しました。

そして、午後3時にはその日の打ち合わせを終わらせ帰り支度をしていると、発注先の副社長が来て「今晩も一緒にご飯を食べましょう。仕事が終わるまで待っていてください。」と言われました。

もう我慢の限界まできていましたが、無碍に断るわけにもいきません。
何か言い訳して帰ろうとしてもお腹が痛くて、うまい言い訳が思いつきません。
結局、そのまま会社で待っていることになりました。

なるべく動かないように、お腹を刺激しないように、じっと我慢していました。
しかし、お腹に痛みが走る間隔が段々短くなり、忍耐の限界が来ていました。
もうどうにもならないと意を決してその会社のトイレに入りました。
トイレの中は、匂いの大元だけあって大変な臭さでした。
ただ不思議なことに、きちんと掃除されていて全く汚れていませんでした。
おそらく汚物タンクから匂いが直接逆流しているのでしょう。

一度トイレに行ったら、お腹の痛みはすっかり治ってしまいました。
また、この経験をしてから、他の会社のトイレは全然平気になりました。

ただ、この会社へはそれから発注していません。
オフショア開発を行っていると、打ち合わせのために発注先に行かなければならないときがあり、トイレに入らないとしても、あの強烈な匂いの中で打ち合わせを行うのは、正直きつかったからです。
本当の理由は言えないので、その会社の人たちは不思議に思っていることでしょう。