長い間、オフショア開発を活用していると、発注先の会社の方針が変わったり、オフィスを引っ越したりといったことが起きます。最初聞いたときには発注元とは関係ないと思っていたことが、実は大きな影響があったりします。

今回は、私が経験した事例を2つご紹介します。

オフィスの引っ越し

私が発注していたベトナム・ホーチミンの会社の話です。
その会社は、多くのIT企業が集結しているE-TOWNというオフィスビルに入居していましたが、9区の工業団地に引っ越すことになりました。

会社の規模が大きくなってオフィスの引っ越しをするというのはよくある話ですが、問題は9区の場所にありました。
9区というのは一応ホーチミン市ですが、市の中心部からかなり離れたところにありました。

ベトナムでは公共交通機関はあまり発達していないので、みんなバイクで通勤しています。E-TOWNであれば、ほとんどの人は家から30分以内で通えますが、新しいオフィスだと1時間以上掛かってしまいます。
1時間の通勤時間というのは日本人にとっては短い方ですが、ベトナム人にとってはとても長い時間です。

会社も離職者を減らすために、土曜日を休みにしたり、市中心部から専用のバスを運行したりしました。
それでも社員を引き止めることは出来ず、その年に3割の人が会社を辞めたそうです。

ただし、この数字は顧客向けに脚色された数字ではないかと疑っています。
私がそれまでのプロジェクトで知り合った30人くらいの社員のうち、オフィス移転後に残っていたのは4〜5人でした。
その人たちも、2年後にはほぼ全員辞めてしまいました。
たまたま私の知り合いがたくさん辞めていたんだとしても、全体で3割というのはあり得ないと思います。

その後もその会社に発注していましたが、自社のプロジェクトのルールなどを一から教え直さなければならなかったので、暫くは大変でした。

私が直接経験したのはベトナムの話ですが、別の部署が使っていた上海の会社でも同じことがあったそうです。

残業代不支給で社員が転職

中国の地方都市のある会社は残業代を支給するのを止め、月棒制に変更しました。
そのため、社員は残業があるプロジェクトに入るのを嫌がるようになりました。作業量の多いプロジェクトにたくさんの技術者を割り当てるなどしてくれれば、そのようなことは起きなかったのですが、その会社ではそこまで対応しなかったのです。

モティベーションの低下により、プロジェクトの進行に支障を来すようになったため、オフショア開発会社の社長に残業代を支給するように要請しましたが、受け入れてもらえません。いくら顧客でも経営方針については無理強いはできません。

そして、3ヶ月が過ぎた頃、異変が起きました。社員たちが同じハイテクパーク内にある別の会社に次々と転職してしまったのです。元々、給料が安いなどの不満を持っていたこともあり、社員はどんどん辞めていきます。

とくに優秀なリーダクラスの転職が進んでいたため、さすがにプロジェクトの維持に問題が起きるようになりました。
そこで、再度残業代の支給を復活するようオフショア開発会社の社長に申し入れました。今度は、対策がなされない場合、発注を止める可能性があることも伝えました。

結局、残業代の支給は復活することになりましたが、既に3割の社員が、この数ヶ月間で辞めてしまっていました。

月棒制への移行は、無駄な残業を減らす効果を狙って実施したものだと聞いています。それ自体は悪いことではないと思いますが、急ぎ過ぎると思わぬ問題が起きることもあるので、慎重に進めて欲しいと思いました。