オフショア開発失敗事例10 要員の半数がインターンだった

ベトナムのある会社にWebシステムの新規開発を発注したときのことです。
約60画面で開発期間は3ヶ月でした。
その会社には何度も作業を依頼していて良いところも悪いところもある程度把握していました。
規模は大きい割に管理は杜撰で、遅れが生じてもなかなか対策を打とうとしないのでいつも手を焼いていました。
ただ、技術者は優秀な人がいたことと、私の部署の開発手順をよく理解していたので、継続して発注していました。

予想に反して直ぐに要員追加で対策

そのプロジェクトも1ヶ月が経過した頃から遅れが発生しました。
5日の遅れで、過去のプロジェクトよりも遅れの発生が早く、遅れ幅も大きめです。
ここで対策をとらないと、遅れが拡大して対策不能になってしまいます。
週に1度開催していたTV会議でPMをフォローします。

私 「遅れが5日になっています。直ぐに対策をとってください。」
PM「分かりました。」
私 「どんな対策を打つのですか?」
PM「要員を追加します。」
私 「・・・」

この回答は予想していませんでした。
過去のプロジェクトでは、もっとひどい状態のときでも要員の追加は拒否されることが多かったからです。
しかし、こちらのとっては一番望ましいやり方なので異存はありません。
追加要員の投入予定とスキルを送ってもらうことにして、TV会議を終了しました。

要員は全員翌日から投入予定で問題ありません。スキルはみんな業務歴1年で、ちょっとスキルは低めですが贅沢は言えません。
これで暫く様子を見ることにしました。

要員追加したのに遅れは拡大

要員投入から1週間が経ちました。
日々進捗を確認していましたが、遅れは回復するどころか8日に拡大していました。
追加要員がプロジェクトのルールや環境に慣れるのに時間が掛かるとしても、非常にまずい状況です。
TV会議でフォローしても「要員追加の効果がでるまで、もう少し待ってください。」と言われるだけです。
相手の言い分も分かりますが、今手を打たないと手遅れになる可能性があります。
とても迷いましたが、ベトナムに部下の一人を派遣し、状況を確認してもらうことにしました。

現地でも原因は分からず

現地で先ず確認してもらったのが、報告通りの人数がプロジェクトに従事しているかどうかです。
しかし、直ぐに問題がないことが分かりました。
そうするとどこに問題があるのか見当がつきません。
今回のプロジェクトで使っている技術は、過去のプロジェクトで何度も使っているものばかりです。
業務仕様にも難しいところはありません。
しかも遅れは全体的で、特定のプログラムだけが遅れているわけではありません。
原因が分からないと要員をさらに追加してもらうしかありませんが、それで回復できる保証もありません。

驚きの事実が判明

翌日になって、現地の部下から連絡がありました。
作業が遅れている要員一人ひとりにヒアリングしていたらとんでもないことが分かったそうです。

部下「とんでもないことが分かりました。追加要員はみんなインターンです。」
私 「インターンって何?」
部下「大学生が、見習いの形で業務に就くことです。」

そういえば新聞で読んだことがあります。
就職する前に、お試しの形で大学生が実際の仕事を経験するというやつです。

部下「しかも、元の体制にもインターンがいました。今の16人の体制の内、9人がインターンです。」

半分以上がインターンでは仕事が進むはずがありません。
早速TV会議を開き、PMを問い詰めます。

私 「大学生を入れるというのは聞いていないが、どういうことか?」
PM「とくに問題はないと判断した。」
私 「問題はある。正式な社員ではない人間を従事させて良い契約にはなっていない。」
PM「・・・」
私 「しかも経歴には1年の業務経験があるとなっているが、嘘ではないか。」
PM「プログラミングの経験を記載した。彼らは大学で勉強している。」
私 「大学の勉強が業務経験に含まれるわけはないでしょ。」
PM「・・・」
私 「正式な社員を割り当てる前提でお金を支払っている。直ぐに社員を投入してほしい。」
PM「分かりました。努力します。」

結局、社員の割り当ては大幅に遅れ、プロジェクトも半月の遅延でやっと完了しました。

この失敗から得た教訓

このような事例では、発注側で出来ることは限られています。
プロジェクト開始時に要員をしっかりチェックするしかありませんが、常に見張っているわけにはいかないので、事前に防ぐことはできません。

ただ、日本国内で請負で発注する場合も状況は同じです。
結局、納品物を完成する責任をちゃんと認識している会社を選ぶしかありません。

ちなみに、本件のオフショア開発の会社も、以前はもう少ししっかりしていました。
ただ、支社長が変わり、利益に対する締め付けが厳しくなって変わってしまったようです。
この会社とは、この直後に取引を止めました。
信頼関係が損なわれてしまったので仕方ありませんが、個人的に付き合いもある良い技術者がいたので非常に残念でした。