私が国際調達部で、社内のオフショア開発プロジェクトのサポートを行っていたときのことです。
ある部署からベトナムのオフショア先の会社に見積りを依頼したところ、その額が高すぎるというのです。依頼元の予算約700万円に対して、オフショア先の見積額は約2,500万円でした。

通常なら断って別の会社を探せば良いのですが、このプロジェクトでは、基本設計でオンサイト要員を2名を日本に呼んで作業を行っていました。後工程では、この2人を現地に戻しブリッジSEとして使おうとしていたので、他の会社への切り替えは出来るだけ避けたいところです。
それでオフショア先との間に入って調整して欲しいというのが依頼内容でした。

オフショア先と交渉するもまったく話にならず

早速、オフショア先とTV会議で交渉を開始しました。
交渉の相手は見覚えのある相手でした。背が高く、頭は角刈りで軍人のような見た目で、非常に強気の交渉をしてくる手強いやつです。前の交渉の時も手を焼かされました。いやな予感しかしません。

その予感通り、今回も強気でまったく歩み寄ろうという気配はありません。もっとも金額の開きが大き過ぎるので、こちらも譲歩を引き出そうとはしていませんでした。
それよりも見積金額の根拠を確かめて、何が発注元とずれているのか確認することにしました。オフショア先が作った見積資料を見ると、画面数に同じ数を掛けて規模や工数を算出しています。要件定義段階ならともかく、基本設計が完了した現時点としてはこれでは粗すぎるので、ちゃんと画面ごとに見積もった資料を出してくれと依頼し、その日の会議を終えました。

再見積りでも金額の開きは埋まらず

翌々日、見積資料の改訂版が送られてきました。金額は2,100万円に下がっていましたが、依頼元の700万円とは3倍の開きがあります。

画面ごとに発注元とオフショア先の見積規模を見比べていくうちに原因が分かりました。このプロジェクトでは類似した画面が多数あり、発注元は流用を前提に見積もっていました、しかし、オフショア先ではすべて新規開発する前提で見積もっていたのです。
これ自体はよくある話なのですが、今回はオンサイト要員を2名入れて基本設計をやっているので、このことはオフショア先でも知っているはずです。
しかし、オンサイト要員2名を呼んで話を聞くと、彼らは見積りには関わっていないというのです。出来上がった見積りに対する意見も求められていないと言っていました。それでは、流用を考慮した見積など出来るわけがありません。

再度、TV会議を開き、オンサイト要員から設計内容を吸い上げて、流用を前提とした見積りを作成するようオフショア先に依頼しました。
しかし、出てきた見積りは1,800万円で前回から300万円しか下がっていません。

発注先への切り替えを検討したところ、相手の態度が豹変

これ以上交渉を進めても折り合うのは難しいと考えた私は、別の発注先を探し始めました。
ちょうどベトナムのオフショア先を増やそうと評価を行ったばかりだったので、すぐに会社は見つかりました。
発注元の担当者は、切り替えには消極的でしたが、金額が折り合わない場合、仕方がありません。

そしてオフショア先との最後の交渉を行いました。最初に、今の見積金額は呑めないこと、この交渉が決裂した場合、発注は行わないことを相手に告げました。
すると、もう一度値下げを検討するから待ってくれと言われ、翌日まで待つことにしました。

翌日、見積金額は950万円まで下がりました。
まだ、発注元の希望には達していませんが、リスク対策費として見込んでいたお金を充てることで差額を捻出したようです。

この経験から得た教訓

やはり、発注先は複数に対して合い見積りを取ることが必須です。
今回のようにオンサイト要員を抱える場合、あらかじめ全体の見積りをとっておくこと、それでも話が変わる恐れがあるので、いつでも発注先を変更できるようにしながら仕事を進めるべきですだと思いました。