オフショア開発におけるコミュニケータとブリッジSEの役割
ベトナムのオフショア開発では言葉の違いを埋めるために、大部分のプロジェクトでブリッジSEやコミュニケータが参画します。しかし、会社によって彼らの役割やプロジェクトへの関与の仕方は異なるの注意が必要です。
コミュニケータに全面的に任せる場合
仕様書、納品物、進捗報告書、日常的なメールのやり取りの翻訳からTV会議での通訳まで、すべてのやり取りにコミュニケータが介在する方式です。このやり方だとPMやリーダ、開発者は日本語が分からなくても問題ありません。
そのため、高い技術力や管理力を持った要員をアサインしやすいというメリットがあります。
また、オフショア側の会社にとっても、非常に給料が高いブリッジSEを使わなくても済むというメリットがあります。
その反面、コミュニケータは技術的な知識がないため、細かい話がうまく伝わらないことが多々あります。
例えば「再帰的」、「透過的」という言葉を言っても、コミュニケータには意味が伝わらず、無理やりベトナム語に翻訳するため、混乱することがあります。(英語の単語で言ってもベトナム語に翻訳されたことがありました。)
日本語でも同じで、コミュニケータに「設計の型は・・・」と言われて、デザインパターンのことだと分かるまで随分時間が掛かりました。
同じことがプロジェクト管理や業務の用語で発生します。
やり取りがちぐはくだと感じたら、別のことばに言い換えて、技術者に復唱させるなどして確認することが必要です。
仕様書や納品物など大量の文書の翻訳のみコミュニケータが行う場合
日常的なやり取りはブリッジSEが対応し、コミュニケータは大量文書の翻訳など、あくまでブリッジSEの補助のみを行う方式です。
一般的にはブリッジSEは、日本語ができ、技術力もあるので、コミュニケーションは円滑に進みます。優秀なブリッジSEだと、国内の会社に発注しているのと変わらない感覚で仕事を進めることができます。
しかし、このやり方にも落とし穴があります。
アサインされたブリッジSEが力不足の場合です。ほぼ、すべてのやり取りをブリッジSEを通すので、ブリッジSEが駄目だとどうしようもありません。
日本語のできる技術者は数が少ない上、給料も高いので、ひとつの会社に所属するブリッジSEはそれほど多くはありません。しかも優秀なブリッジSEは、発注元が手放さないため、なかなか空きません。(日本人技術者も同じですよね。)
そういうわけで、ブリッジSEを替えてくれとオフショア会社に頼んでも、なかなか対応してもらえません。
対応してもらえたとしても、同じレベルのブリッジSEだったということがよくありました。
どちらが良いとは言えない
ブリッジSEが主体の方がプロジェクトはやりやすいです。
しかし、ブリッジSEの力量にプロジェクトの成否が大きく左右されます。
コミュニケータ主体の方式では、サブリーダや担当者とある程度コミュニケーションがとれるので、普段は多少面倒ですが、リスクは低減できます。
結局、良いブリッジSEを見つけられるかどうかにつきます。
発注時に経歴などをよく確認することが大切
気をつけなければならないのは、ブリッジSEと名乗るだけのスキルを持っているかです。
私が発注元として携わったプロジェクトでは、日本語のほとんで出来ないブリッジSEをたくさんみました。おそらく会社の採用担当はどのくらい日本語ができるかの判断がつかないので、片言の日本語であることが見抜けず採用してしまったものと思われます。(私のプロジェクトでは、彼らの単価は他の開発者と変わらなかったので、クレームは出しませんでした。)
もっと悪質なのは、コミュニケータをブリッジSEと肩書きだけ変えるケースです。
私の元の会社では、中国のあるオフショア会社と百人以上のラボ契約を結んでいました。その会社では、コミュニケータよりもブリッジSEの人月単価がかなり高かったのですが、ある年、突然数名のコミュニケータの肩書きをブリッジSEに変えて、単価アップを要求してきました。
当然、その要求は拒否しました。ついでにブリッジSEの経歴を調べたのですが、日本語学科卒業で明らかに技術的経験のない人が既に入っていました。
ベトナムでは、技術者とコミュニケータの給与に差がないので、このような事例は聞いたことがありません。しかし、ブリッジSEとコミュニケータには明確な定義がないので注意が必要です。
プロジェクトを開始する時は、ブリッジSEの経歴を確認し、TV会議でも良いので面接を行って、納得してから発注することが大切です。