自ら自分の強みを捨ててしまった日本
QCサークル活動は品質改善スキルを継承する良い機会だった
私が社会人になった頃は、さまざまな品質向上活動が盛んに行われていました。
しかし、バブルが弾けた90年代終盤にすべてなくなってしまいました。
例えば改善提案という制度があり、職場のちょっとした問題を解決して報告すると五百円の図書券がもらえました。
本当にちょっとした問題点でよく、ファイルの背表紙の書き方を分かりやすくするという程度で十分でした。
毎月1件出すのがノルマで、忙しい時期は面倒に思うこともありましたし、その改善が実際に役立っているかは微妙なところもありましたが、各人が職場の問題を考える良い訓練になっていました。
頑張って5、6枚出せば、ちょっとしたお小遣いになるので、一生懸命取り組んでいる人もいました。
その他にもQCサークル活動というのがありました。
期の最初に職場の問題を出して、半年掛けて改善し、その成果を発表するというものでした。優秀な活動を行ったチームは、賞金が与えらえれていました。
QCサークル活動も、仕事の合間でこなさなくてはならなかったため、忙しい時にはとても煩わしかったのですが、今考えてみると、各人の品質意識と改善スキルの向上という面では非常に役立っていました。
忙しい業務をこなしていると、どうしても目の前の仕事をこなすことばかりを考え、プロセスをより良くすることは後回しにしがちだからです。
それと改善を行っていく上では、改善スキルの継承が不可欠です。
職場のどこに問題点があるかを見つけるスキル、実際に改善方法を考えるスキル、改善効果を計測するスキルなどは、ただ考えるだけでは身につかないので、職場の先輩の指導のもとである程度訓練を積むことが必要になります。
QC活動は、そのようなスキルを先輩が後輩に教えるための良い機会になっていました。
一度止めてしまったら元に戻すのは時間が掛かる
ところが、バブルが崩壊してしばらく経った90年代終盤になると、私の会社では様々な行事や活動を、経費節減のために止めてしまいました。
運動会や改善提案制度、QCサークル活動など、多くの制度が対象になりました。
近頃になって運動会は再開したと聞いています。
しかし、QCサークル活動を同じように再開するのは難しいと思います。
なぜなら、QCサークル活動においては、活動を引っ張るリーダーの存在が不可欠となりますが、活動休止の期間があまりに長かったため、リーダーとしてのスキルを持っている人が、現場からいなくなってしまったからです。
再開してもリーダーを育てるには何年もの時間と多大な費用が掛かるでしょう。
QCサークルのように改善をボトムアップで行っていくやり方は、長い年月を掛けて育ててきた日本の強みだと思うのですが、長期にわたって景気が低迷しているうちに、自らその強みを捨ててしまっているのは非常に残念です。