写真は、ベトナム・ホーチミン市のはずれにある妻の実家の近くの道を撮ったものなのですが、ここにいつも地べたに座り込んでいるお婆さんがいました。

そのお婆さんは、アオ・バー・バーという寝巻きのような服を着て、お椀を膝に抱えて座っていました。
お椀の中には、おこわのような食べ物が入っていました。
年は80歳くらいに見えるのですが、ベトナムの老人は年齢よりも老けて見えるのでもっと若いのかもしれません。

私が傍を通っても、お婆さんはまったく興味がなさそうで、まったく動きません。

最初は物乞いかと思っていたのですが、こんな人通りの少ない場所では恵んでくれる人がいるはずがありません。
かといって強い日差しを避けられる屋内から、わざわざ炎天下の路上に出て座っている理由が思いつきません。
日中は35度くらいまで気温が上がるホーチミン市では、日陰に座っていたとしても相当きついはずです。

妻に聞いてみたのですが、彼女も分からないといいます。

虐待

何日か経って理由が分かりました。
妻が義母に聞いてくれたのです。

そのお婆さんは、息子と仲が悪いために朝になると家を追い出され、仕方なくずっと路上で座って過ごしているというのです。
夜になると家に入れてもらって寝て、朝になると家から追い出されるそうです。

この親子に何があったのかは分かりませんが、日本だったら虐待として捕まるかもしれません。
家族とくに親を大切にするベトナムでは考えられないことです。

このお婆さんにとって多少の救いだったのは、近所の人がご飯や水などをくれることです。

この地域は、カトリック教徒が集まって作った町で、住民の大半がカトリック教徒であるため、困っている人を助けようという意識が他の地域よりも高いようです。

せめて教会の礼拝堂に入れてあげれば、強い日差しを避けることができるのですが、なぜかそれは許されないそうです。

いつの間にか消えた老婆

最初にお婆さんを見てから半年くらい経った頃、路上からお婆さんの姿は消えていました。
妻に聞いても理由は分かりません。
でも、亡くなったという噂も聞かないので、息子と仲直りして家で過ごせるようになったのであればよいのにと思います。

日本では高齢化が進んで、特養老人ホームが足りないなどの問題が起きています。
これに対してベトナムでは、家族が老人の面倒を見て、老人も孫の面倒を見るなどしてお互いに助け合って生きています。
でも、これは国の老人に対する施策が不十分で家族に頼っているとも言えます。
老人は家族が面倒を見るという前提が崩れると、老人は行き場がなくなってしまいます。

ベトナムでは、人口が都市へ集中するに連れ、核家族化、近隣住民と疎遠化が急ピッチで進んでいます。
近い将来、日本と同じような状況になるのは避けられないのではないかと思います。